負の所得税

負の所得税とは、収入から一定の控除を行い(これを所得Aと呼ぶ)、Aが正の場合はAに税率をかけた額を納税し、Aが負の場合はAに税率をかけた額の給付を政府から受ける(BIとは異なり、世帯ごとに給付がなされる)というものである。表1は、控除額を300万円、税率を定率の30%として試算したものである。
なお、所得税の税率は表1のような定率のケースと、累進税率のケース、逆進税率のケースが考えられる。これについては負の所得税に限った話ではなく所得税一般における話であるが、累進課税の場合、所得金額のブラケット の境目に所得が偏り、労働配分に歪みが生じるというデメリットがある。そのため負の所得税を考える場合においても多くの人々が定率税を前提としているのは自然な流れであると言えよう。

 

負の所得税によるセーフティネットは、生活保護よりは評価できる。なぜなら生活保護のように役所で給付を受けることに伴うスティグマが無くなり、かつミーンズテストにかかるコストの大半が抑えられるからである。加えて負の所得税の場合、収入の低い人々にのみ給付を行うため、財源確保の観点ではBIより実現の可能性が高い。しかしながら大きなデメリットが存在する。それは、負の所得税が労働意欲の減退につながる政策であるということだ。なぜなら、負の所得税はBIと同様、一切就労しなくとも金銭を得ることが出来る制度であるためだ。上記の例の場合、勤労収入がゼロでも年90万の手取りがあるため、工夫すれば不自由なく生活を送ることができる。これにより、健康な人であっても、就労という選択肢を選ばない人が続出するかもしれない。この点を改善したのが次に述べる給付付き税額控除と呼ばれるものである。